いい景色だな。都会に住んでいるとそう味わえるものじゃない。



 同感です。俺もそう思います。











 ハハ。お互い気が合いそうだな。



 そうですね。ハハ。










 こうして夕日を眺めていると仕事のことなど忘れてしまう。心が洗われるよ。



 元木さんは・・・。



 ハハ。何かな?



 
夏姫さんのことを、どう思っているんですか?



 私にとって
一目惚れという言葉を初めて初めて実感した女性だ。











 初めて夏姫と出会ったのは
彼女の父の工場に出入りしているときのことだったよ。

もちろん仕事でね。

差し入れといって工場のみんなと一緒に冷えたお茶をもらったよ。












 もう2年くらい前になるだろうか。でも私は昨日のことのように覚えているよ。

夏姫という女性が特別な存在として心に刻まれたのはそれが始まりだった。



 ・・・。



 初めての出会い以来、夏姫に対する想いは日増しに強くなっていったよ。

それは今でも・・・。



 そうですか。








 


 
ここまで人を愛しいと思ったことはない。夏姫は私の全てだ・・・。










 


 ハハ。まあ今のところは一方通行でしかないがな。何度かデートをしてプロポーズをしたが

未だに答えをもらっていないのだから。









 


 私もバカじゃない。夏姫が私に恩義を感じていて、申し入れを断れば工場への融資に

影響があると考えている。

それは口に出さずともわかっているつもりだ。











 直接的にどうかわからないがそれが夏姫を苦しめているのは確かだろう。

その証拠に、
夏姫は私の前ではあまり笑顔を見せない。

もしかしたら一緒にいても苦痛なだけなんだろうか。



 ・・・。



 それでも私は夏姫が好きだ。この想いはすべて伝えてある。











 少なくとも夏姫の言葉を強要するつもりなどない。断られたとしてもそれを受け入れる

覚悟はできている。

ただ、夏姫がもし私を受け入れてくれるのなら、
私は仕事を捨てるつもりでいる。



 仕事を?











 


 今までもそうだったが、
今のままでは月に一度も会えるかどうかも怪しい。

今日も久しぶりに会えたというのに、仕事のことが頭から離れなかった。

そんな男が・・・・一人の女性を幸せにできるはずがない。










 
気持ちさえ通じていれば離れていても関係ない。俺は、そう思いますよ。



 そうかもしれない。だが不安や孤独を感じたとき、私は夏姫のそばにいてやりたい。

気持ちが通じているからこそ、そばにいてもらいたいときがあるはずだ。

答えはひとつじゃないんだよ。



 そうかもしれませんね・・・。












 俺、恥ずかしいです。
元木さんのことを少し誤解してました。会ったこともないのに

キザでイヤミな人間なんじゃないかと。



 アハハ。キミは正直だな。














 俺も夏姫さんが好きです。今もこれからも、いつまでも一緒にいたいと思っています。

夏姫さんが「ひとりの男」として見てくれているかどうかわかりませんが、

夏姫さんを幸せにしたい、守ってあげたい。

その気持ちは元木さんに負けていないと思います。



 そうか・・・。









 


 うーん、そうなると私の方が歳をとっている分、不利になるな。



 そ、そんな俺なんか若いだけですよ。ハハハ。














 今日は夏姫と、そしてキミに会えてよかった。また会いたいものだな。



 そうですね。また会いましょう、元木さん。



 ああ。男の約束だ。それじゃあな、馬鉄くん。













 悔しいけど俺なんかよりも夏姫さんにはお似合いかもしれないな。

けど、
答えを出すのは夏姫さん自身だ。














第1345弾





Piaキャロットへようこそ!3


PartE













 

夏姫の婚約者、元木誠二と別れた馬鉄は夏姫のマンションへ。

馬鉄はアヴァロン軍の任期満了後は正式にミサキシティのPiaキャロット24号店で働き、

夏姫を迎えにいくと告白。









 

夏姫は「気持ちの整理がつくまでもう少しだけ待ってほしい」と告げる。

馬鉄の想いは伝わった。あとは答えを待つだけだ。











 シャバの空気を満喫しているな。馬鉄。



 文句でもあるのか。



 貴様が誰をどうしようが俺には興味がない。だが、
そろそろ本業に戻ってもらうぞ。


















 
およそ1200の敵部隊が県境に集結している。連中の狙いは当然この街だ。

あと2日もすれば戦闘に突入するだろう。

ファミレス業務はオシマイだ。すぐに出撃準備しろ。



 わかった。
だがひとつだけ言っておく。



 なんだ。













 俺は
半年分の報酬をもらってアヴァロン軍に入った。半年後は自由にさせてもらうぞ。

邪魔をするなら、
お前を斬ってでも去る。



 フ、好きにしろ。
半年もあれば貴様は用済み。この街を足掛かりにして数ヵ月後には

関東一円はアヴァロン軍のものだ。










 

最前線復帰のため、Piaキャロット24号店ともお別れ。

馬鉄は残されたわずかな時間を岩倉夏姫のために使おうとする。

しかし、








 夏姫さんがいない。どこか出かけているのかな。兵隊に戻る前に返事を・・・



 おい馬鉄!
大変だ。



 マーカーか。敵部隊進攻なら知ってるよ。それより夏姫さんを知らないか?



 その夏姫さんだが、
店をやめて地元に帰ったらしい。



 な、
なにッ!!













 さっき店長が言ってた。
間違いねえ。



 地元に・・・。



 どうする、駅に探しに行くか?
すぐに車を回すぞ。



 
いや、いい。



 おい!?



 これが・・・
これが夏姫さんの答え・・・なのか。













 
こうなる可能性は少なからずあった。でもいざそうなってみると、胸が痛いな。

夏姫さんに逢いたい。

一言会って「さよなら」と言いたかった。













 
そして、おめでとうと・・・。














 
仕事もしないで、そんな格好で何をしているのかしら??



 
















 い・・・今、休憩中なんです。さぼりじゃありません。













 まあ、長い休憩なのね。



 ・・・怒らないんですか?



 だって、休憩中なんでしょう。



 夏姫さん。地元に帰ったんじゃ・・・。



 
忘れ物を、あなたに届けに来たの。













 
この指輪を持ったまま、この町を離れることができなかったの。

だから受け取って。












 く・・・。











 


 
さようなら、夏姫さん。元木さんとお幸せに・・・。



 もう一度、もう一度だけ・・・
この指輪をあなたから受け取っておきたいの。



 えっ。












 
あなたと私の、婚約の証。誠二さんにそう伝えるために。














 
必ず帰ってくるわ。それまで待っていて。必ず帰ってくるから。



 夏姫さん、夏姫さん・・・。



 そのときは、ずっと私のそばにいて。いつまでも、いつまでも・・・。













 
馬鉄くん。愛しているわ。














































 おおお。どうした者ども、なぜ戦おうとせん!



 み、味方部隊が相次いで壊滅。
アヴァロン軍に凄腕の猛者がいます!



 軍司令官、退却しましょう(汗)



 ええい、情けないヤツらめ。ならばこの俺が仕留めてやるっ!















 我が名は菊重ナギノブ!貴様の首、
もらいうける!



 上等!
















 
うげえ!



 た、
たった一太刀で(汗)



 軍司令官がやられたぞ。みんな逃げろ、
退却だっ!



 手向かう者には容赦しない。命が惜しくば去れッ。



 なかなかやるな。アヴァロン兵。
















 
久々に骨のあるヤツに会えて嬉しいぜ。次は俺が相手だ。



 
いくらでもこい。何千何万の敵がこようと、ミサキシティには一歩たりとも

入れさせん!










.






FIN.



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