本心と従属の狭間で




趣味はスイミング。主人公と同じ高校に通う二年生。窓際の席で一人でボーッと外を眺めている。継母とうまくいかず、家を飛び出して暇をつぶしている。ちなみに「仮面の中に潜む笑顔」とロングソード幹部・とつお氏は高評価。ゲームの世界ではなにがなんでも楽しんでいたい。それが非現実的だったり人間として適切な行為でなくてもだ。形を気にするよりも己の本心に身を任す。
初期のファミコンやアクション、シューティングゲームはそれが通用したがゲーム会に咲いた美少女ゲームで次々と私に衝撃が走る。「わしの言うことを聞け!!」いくらそう叫んでも聞きやしない。最大の難関だったのが選択肢の登場。自分の考えに近い奴を片っ端から選択するとなぜかバットエンディングばかり。しょうがないので相手に合わせて自分の答えとは正反対の選択肢を無理に選んだものである。女の子の望む通りにしなければバットエンドだからだ。結局女の子をクリアして擬似恋愛を体験する本来のコンセプトから脱落し、女の子の言うがままの『』に成り下がった。

苦労の末、やっとのこと人並みに美少女ゲームをクリアできるようになっていった。高校生になった頃にはあれこれ美少女ゲームの賛否を評論するようになるベテラン(?)ぶりを発揮。その中でロングソードのメンバーとともにファミレスゲーム「ピアキャロットへようこそ!」にハマる私。狙うは今井沙織。マイナーなのを落とすのが私の主務(趣味?)だ。
「恐れる事はない。攻略は簡単だ。自分とゲームの主人公を切り離せばいい。沙織を落とすために犬に成り下がってやろうじゃないか。」
妙な自信を持ってプレイを始め、見事にクリアした。と思ったらどんでん返しがやってくる。沙織の言う通りにしてやったらなぜかバットエンド!Why?なぜだ。俺はお前の言う通りにやった。それが気に入らないのか・・・・。どこでまちがったんだ!

しばらくした後に攻略法がゲーム雑誌に載っていたので確認すると、ゲーム終盤に沙織が自暴自棄になったときに抱いてしまったのが失敗だったらしい。だがそれは当の本人が望んだ事なのだ。攻略法はこう書き綴っていた。

「沙織は自暴自棄になって慰めてくれるの求めてきます。しかしいつまでも逃げていては何も解決はしません。彼女に本当の意味で解放し強くなってもらいましょう。」

ふ、ふざけるな!どうやらゲームとはいえ佐織も一人の人間。道を外すときもあるようだ・・・。己の本心に従えバットエンディング、女の言うとおりにすればバットエンディング。もうワシは知らん、勝手にしろ!もうギャルゲーなんてお断りだってんだ!逆切れした私は二度とこんなくだらぬゲームはしまいと堅く誓う。

堅い堅〜い誓いだったがすぐに破った。
「選択肢の前でセーブしとけばよかったじゃん!」
美少女ゲームの黄金の法則を忘れていた。


文:ガードリーダー






自暴自棄の沙織は主人公を誘惑(?)してくる。
彼女の色香に負けず真のハッピ−エンドを目指すのだ。
「無駄な抵抗はよせ、我々は誘惑には屈しない!」