あれはひょっとして・・・。間違いない、夏姫さんだ。










 


 たしかに男がいる。でもこの距離じゃ
なにを喋っているのか全くわからん。



 ククク。
困っているようだね。















 なんだ貴様は!



 俺か?
俺はただの観光客。



 見るからに怪しい風体。
とても観光客には見えんぞ。



 ククク。そんなことより
キミにいいものをあげよう。














 
ほら使いたまえ。



 なんだこれは。



 何を話しているか気になるんだろう。あのベンチに
超小型マイクを付けておいた。

そのイヤホンで会話が聞き取れるはずだ。



 盗聴か。さすがそれは・・・。



 文明の恩恵は素直に享受すべきだよ。














 かつてキミと同じように
「年上の女性」に突貫した男がいたが、俺の献策を拒絶してね。

距離を縮めるどころか
永遠に「見つめるだけ」で終わってしまったよ。



 ・・・。



 キミはなかなかの武人。同じ道をたどって欲しくはない。

利用できるものは何でも使いたまえ。



 むむむ。わかった、
使わせてもらおう。














第1345弾





Piaキャロットへようこそ!3


PartD















 母さんは元気にしてる?工場はどう?







 


(夏姫の父) ああ。母さんも元気にしてる。工場も順調だよ。

これが大変だ。しかし、やり甲斐はある。











 
それもこれも元木さんのおかげだ。



 ・・・。



 でもな夏姫。
お前が気を遣うことはないんだよ。元木さんのことは。










 父さんの工場が元木さんの銀行から融資を受けているから、お見合いを

断れなかったんだろう?











 
たしかに元木さんは素晴らしい人だ。好青年で人当たりもいい。

工場の経営が傾きかけたとき、父さんは何軒も何軒も銀行に足を運んだ。

しかしこんな身なりだ。半ば門前で追い払われたよ。








 


 誰もまともに聞こうとしない父さんの話を、元木さんだけが耳を傾けてくれた。

すぐに工場に足を運んでくれて視察したあと、笑顔でこう言ってくれた。

安心してください、と。



 うん。私も嬉しかった。



 でもな夏姫。元木さんのご恩とお見合いとは別に考えなきゃいけない。













 お前の人生はお前だけのものなんだ。



 父さん・・・。











 


 そうだったのか。元木さんという人は、
夏姫さんの父親の工場にとっては恩人。

それでお見合いを断れなかったのか・・・。



 その婚約者。岩倉夏姫の様子を見に
近々ミサキシティに来るらしい。



 なにっ!



 おそらく3日以内。



 
なぜアンタがそこまで知っている。



 ククク。俺は何でも知っている。
地獄耳ってやつさ。



 そうか。今回の件といい
助力には感謝する。どこの誰だか知らないが

見た目ほど悪い奴じゃないな、アンタ。



 よき若武者よ。武運を祈っている。















2日後。夏姫のマンションに来訪したのは婚約者の元木誠二。

久しぶりに夏姫に会いに来たようだが、今日は顔合わせだけらしい。








夏姫のマンションから去る元木誠二を見た馬鉄は・・・









 突然失礼します。あなたが元木誠二さんですか。











 ええ、そうですが・・・あなたは??



 俺はPiaキャロット24号店のアルバイトで、夏姫さんの同僚の馬鉄って言います。

よければ少しお話させてもらえませんか??



 馬鉄・・・。そうか、君が。










 
ついさっき夏姫と話をしていて、君の名前が出てきたんだ。

お店に優秀な新人が入ってきたってね。



 ゆ、優秀だなんて、そんな。



 たしか近くに海岸が見えたな。そこまで歩こうか。














次回は最終パート。馬鉄の恋物語の結末は・・・。





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